この恋、永遠に。

私の恋人

 柊二さんとキスをした。
 私の頭が繰り返しそれを再生する。彼の形のいい唇がそっと近づいて、彼の吐息がかかったかと思うと、私の唇に触れるだけの優しいキスが落とされた。あたたかい彼の唇の感触が忘れられない。
 思い出すたび嬉しくて、でも恥ずかしくて、それでもとても幸せな気分になる。
 頬が緩んで赤くなるのが照れくさいのに、それを止める術を知らない。

 私は隣でハンドルを握る柊二さんの顔を見つめていたいのをぐっと我慢して、車窓に流れる景色を眺めた。
 こんなにも、彼が好き。
 でも。幸せな気持ちに反比例するように胸が苦しくなる。私は、自分を偽ったままだ。


 まもなく柊二さんが連れてきてくれたのは、高台から海が望めるイタリアンレストランだった。
 オーナーが柊二さんの知人らしく、ここへ来る前に予約を入れてくれたらしい。
 私たちは窓辺の一角の見晴らしの良い席に案内された。

 店内はお昼を少し過ぎていたというのに満員で、柊二さんが予約を入れてくれなかったら、いや、彼がオーナーと知り合いでなかったら席の確保は難しかっただろう。
 柊二さんは優しくて、お料理もとても美味しかった。
 店内の女性客が柊二さんにチラチラと視線を寄越していたが、彼は全く動じない。きっと彼にとってこんなことは日常茶飯事、取るに足りないことなのだろう。
 私の中に小さな嫉妬が芽生える。それと同時に、ほんの少しの優越感も。だって、こんなに素敵な彼が今笑いかけているのは、紛れもなく私なのだから。

 食事を終えて都内に戻ると、次に向かったのは有名なブランドショップだった。
 遠くから眺めるだけで、こんなお店に足を踏み入れたことがない私は気後れしてしまう。
 それにここって……。

「どうしたの?」

 戸惑っている私に柊二さんが笑いかけてくれる。私の肩を抱き寄せるようにして、顔を覗き込んできた。

「柊二さん、このお店、女性ものばかりですよ?」

「うん。そうだね」

「どうして?」

 柊二さんが買い物に行きたいと言っていたから、私は喜んで付き合うつもりだった。彼は一体どんなものを買うのだろう、という興味もあった。でも、それがどうしてこのお店なの?
 柊二さんが私の背を軽く押して店の中へと促す。

「今度、美緒の友達の誕生日パーティーがあるだろう?」

 萌ちゃんと晃くんのことだ。だけど、どうして柊二さんがそれを知っているのだろう。私は彼に何も話していない。
 私が頷きつつも納得していないと分かったのだろう。柊二さんは更に笑みを深くした。

「昨夜、美緒を迎えに行ったとき、彼らから聞いたよ。美緒は毎年行っているそうだね」
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