この恋、永遠に。
策士な親友
白いクロス貼りの壁に、床は淡いグレーのタイルカーペットが市松貼りになっている室内には、ローテーブルとゆったり座れるソファーが配置され、入り口と窓際の二箇所に観葉植物がある。きれいに片付けられてはいるが、何もないだけの狭い空間だ。
駅前のオフィス街にある十五階建てビルの九階。ここは俺の親友、孝が勤めるグローバルマネジメント株式会社の応接室。あらゆる分野のスペシャリスト―――弁護士、会計士、証券アナリスト等々―――から構成される少数精鋭のプロフェッショナル集団で、企業経営における各種ノウハウを指導、改善していく会社である。
休日の今日、俺は孝に美緒とのことを問いただす為にここへ出向いていた。場所は邪魔されないところならどこでも良かったが、孝が今日は休日出勤だと言うことで、ここを指定された。
「で、早速聞きにきたわけだ」
目の前の俺の友人は、楽しげに口角を上げたまま熱いコーヒーの入ったカップに口を付ける。
ゆったりとくつろいだ様子で俺を眺める彼は、休日出勤するほど忙しいはずなのに、そんな事情は微塵も感じさせない気遣いを持ち合わせている。
「聞くまでもないがな。ただ、お前の魂胆が読めない」
孝の手の平で転がされるのは気に入らない。孝と同様、俺も物事を掌握していないと気がすまない性質なのだ。
「魂胆、ね……」
孝がコーヒーカップを置いた。
「そんな大層なことをしようとしているんじゃないよ。ただ、いいきっかけになると思っただけなんだ」
「…もったいぶるな。何のきっかけだと言うんだ」
俺はジロリと孝を睨みつける。大抵の人間はこの睨み一つで黙らせることができるが、この友人には全く効果がない。真っ直ぐに俺の目を見つめ返し、不敵にも微笑んでさえいる。
「美緒ちゃんは?あれから何か言ってた?」
「…お前と十年ぶりに会ったのは本当だとな。この際、美緒は関係ないだろう。彼女は何も知らないようだったし、嘘を吐いているようには思えない。彼女はどう見ても嘘を吐けるタイプじゃない」
「……そうかな?」
「………」
孝の視線が試すように俺に挑んでくる。お互い何も言葉を発しないまま、ほんの一時そのまま睨みあった。
「…何が言いたい?」
「別に何も。ただ、柊二は彼女とまだ知り合って間もないからね。そんなに全幅で信頼できるものなのかな、と思っただけだよ。もしかしたら、彼女だって何か隠していることがあるかもしれない。柊二に知られたくないような秘密があるかもしれないだろう?」
駅前のオフィス街にある十五階建てビルの九階。ここは俺の親友、孝が勤めるグローバルマネジメント株式会社の応接室。あらゆる分野のスペシャリスト―――弁護士、会計士、証券アナリスト等々―――から構成される少数精鋭のプロフェッショナル集団で、企業経営における各種ノウハウを指導、改善していく会社である。
休日の今日、俺は孝に美緒とのことを問いただす為にここへ出向いていた。場所は邪魔されないところならどこでも良かったが、孝が今日は休日出勤だと言うことで、ここを指定された。
「で、早速聞きにきたわけだ」
目の前の俺の友人は、楽しげに口角を上げたまま熱いコーヒーの入ったカップに口を付ける。
ゆったりとくつろいだ様子で俺を眺める彼は、休日出勤するほど忙しいはずなのに、そんな事情は微塵も感じさせない気遣いを持ち合わせている。
「聞くまでもないがな。ただ、お前の魂胆が読めない」
孝の手の平で転がされるのは気に入らない。孝と同様、俺も物事を掌握していないと気がすまない性質なのだ。
「魂胆、ね……」
孝がコーヒーカップを置いた。
「そんな大層なことをしようとしているんじゃないよ。ただ、いいきっかけになると思っただけなんだ」
「…もったいぶるな。何のきっかけだと言うんだ」
俺はジロリと孝を睨みつける。大抵の人間はこの睨み一つで黙らせることができるが、この友人には全く効果がない。真っ直ぐに俺の目を見つめ返し、不敵にも微笑んでさえいる。
「美緒ちゃんは?あれから何か言ってた?」
「…お前と十年ぶりに会ったのは本当だとな。この際、美緒は関係ないだろう。彼女は何も知らないようだったし、嘘を吐いているようには思えない。彼女はどう見ても嘘を吐けるタイプじゃない」
「……そうかな?」
「………」
孝の視線が試すように俺に挑んでくる。お互い何も言葉を発しないまま、ほんの一時そのまま睨みあった。
「…何が言いたい?」
「別に何も。ただ、柊二は彼女とまだ知り合って間もないからね。そんなに全幅で信頼できるものなのかな、と思っただけだよ。もしかしたら、彼女だって何か隠していることがあるかもしれない。柊二に知られたくないような秘密があるかもしれないだろう?」