この恋、永遠に。
「会社の自販機でよければいつでも奢るよ。ほら、何にする?」

 にこにこ笑って促す彼の前で、あまり頑なになるのも失礼な気がする。私は素直に甘えることにした。

「じゃあ、ミルクティーでお願いします」

「ホットだよね?」

「あ、はい」

 すぐに紙コップに飲み物が注がれ、出来上がりの合図の音が鳴った。お礼を言って傍に設置されているカウンターチェアに腰掛ける。高科さんも自分のコーヒーを持って、私の隣に腰を降ろした。

「お忙しそうなのに、よかったんですか?」

 資材部の私とは比にならないくらい多忙なはずの高科さんだ。直行先から戻ってきたばかりで時間を割いて大丈夫だったのか心配になってしまう。
 だが、高科さんは大丈夫と言って笑った。

「僕だってずっと根詰めて仕事ばかりをしているわけじゃないよ。適度に休憩しないとね。それに、今朝はまだコーヒーを飲んでいなかったんだ」

 彼の言葉が本当なのか、それとも私に気を遣わせないようにして言っただけなのかは分からないが、確かに休憩は必要だろう。
 新卒で資材部に配属されたこともあって、社内に親しくしてくれる人がほとんどいない私には、彼の優しさが嬉しかった。柊二さんに感じるような甘酸っぱい感情ではないけれど、同じ会社の先輩として、高科さんには好意を持っていた。気さくで優しくて仕事の出来る彼のことは尊敬している。

「渡辺さんは、どう?この仕事はもう慣れた?」

「はい。おかげさまで。と言っても、私の仕事は高科さんみたいに忙しくないし、毎日簡単なことばかりですけど」

 そっと口元を緩めると、高科さんは「それでも大事な仕事だよ」と微笑んでくれた。この会社でそんなことを言ってくれるのは彼だけだろう。
 飲み終わった紙コップをくしゃりとつぶして立ち上がった彼は、それをゴミ箱へと放り投げる。そして、思い出したようにこちらを振り返った。

「あ、そうだ。渡辺さん」

「何ですか?」

「今夜、うちの課で飲み会があるんだ。よかったら渡辺さんも来ない?」

 多分、高科さんは好意で誘ってくれたのだろう。けれど私は部外者だ。営業部の知り合いと言えば、今話している高科さん以外にはいなかったし、全社内でも同じ資材部の関根さん以外、まともに話したことすらない。そもそも皆、私とはあまり関わらないようにしていると言った方が正しかったし。そんな中に行ったらせっかくの飲み会を台無しにしてしまいそうだ。
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