この恋、永遠に。
 私は困惑した。

「あの、せっかくですが、私は部外者ですし、知り合いもいないので」

 穏便に断ろうとすると、私の気持ちを汲み取ってくれたのか高科さんが残念そうに笑った。

「…そっか。そうだよね、知らない人間と飲んでも楽しくないよね」

「い、いえ、あの……すみません………」

 せっかく誘ってくれたのにそれを無下に断るなんて失礼だっただろうか。私は急に心配になった。が、次の瞬間、高科さんが顔を輝かせた。何か妙案を思いついたような顔つきだ。

「あ、そうだ。じゃあこうしない?」

 私は小首を傾げる。

「渡辺さんのところの飲み会に僕を誘ってくれないかな」

「えっ?」

「それなら渡辺さんも知らない人間と飲むわけじゃないし、気が楽だろうし」

 突拍子もない提案だ。
 私のところの飲み会ということは、資材部の飲み会ということだろう。けれど資材部といっても、メンバーは私と関根さんだけだ。少し前までは山口さんもいたけれど、それでもこの仲間で飲みに行ったことなど、一度もない。他の部署とは明らかに違う雰囲気であったし、一緒に飲みに行くほど、親しくしているわけでもない。

「あの、高科さん」

「うん?」

「私のところと言っても、関根さんと私しかいませんよ?」

「知っているよ。三人でもいいじゃない」

「でも、関根さんとも一緒に飲みに行くような感じではないんですよ。今までそういうの、一度もなかったですし」

「そうなの?」

「はい」

 会社の仲間と飲みに行ったことがないことは、営業部の高科さんには相当驚くことだったらしい。目を大きく見開いて、本当に驚いているようだ。
 それもそうだろう。高科さんのところはエリート部署だ。いろんな打ち上げや、集まり、コミュニケーションを円滑にするためにも飲み会などは頻繁にあるのかもしれない。

「じゃあ渡辺さんは今まで会社の飲み会に参加したことがないの?」
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