この恋、永遠に。
 ちらりと横目で見られて私は俯いた。赤い顔を隠そうとしても耳まで熱くなっているから、きっと意味がないだろうけれど。
 そんな私に彼はちらりを視線を送る。

「渡辺さんの彼氏って、どんな人?」

 聞かれて見上げると、意外にも真剣な表情の高科さんだった。

「どんな、……って?」

「ああ、ごめんね。ただ興味があって。こんなに可愛い渡辺さんの彼氏なら、きっとカッコイイ人なんだろうね。違う?」

「え……っと……」

 可愛い?私が?高科さんは今まで気さくに話しかけてくれることはあったけど、こんなお世辞を言ったりする人じゃなかった。

「会社の人……じゃ、ないよね?」

 しかもやたらと詮索してくる。

「あの……」

 真っ直ぐに私の瞳を覗き込み、様子を窺っている高科さんは、私の出方を待っているようだ。

 私は柊二さんの顔を思い浮かべた。背が高くて私より頭一つ分以上身長差があるから、私は彼と出掛けるときは、ヒールの高い靴を履くようにしている。なるべくつり合う身長になりたいからだ。
 さらさらの漆黒の髪から覗く同じ色の瞳が私を捉え、その形のいい唇から発せられる低い艶のある声音で私の名前を紡がれると、私はいつも体を震わせる。彼のことを考えると体が勝手に熱くなってしまう。
 彼は、この会社の専務だ。だから、この会社の人間ということになる……。

「…………」

「もしかして、会社の人間なの?」

「え………」

 顔に出ていた?私ははっとして青ざめる。私の恋人が私の勤める会社の専務だということは私以外に誰も知らない。そう、柊二さん本人だって―――知らないのだ。

「あの……、ち、違うんです……その……」

「驚いたな。本当に?渡辺さんが社内の人間と親しくしてるところなんて、見たことなかったのに」

 私の否定は聞こえていなかったのか。高科さんは私が社内恋愛しているのだと決め付けた。

「ついでに聞いちゃうけど」

 一言区切ってから高科さんは言った。

「その相手って、僕の知ってる人?」

 びくりと肩を震わせて高科さんを見上げる。真っ直ぐ私を見下ろす彼に真実を打ち明けるわけにはいかない。
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