この恋、永遠に。

強引なアプローチ

 その日も無事、一日の業務を終えた。
 山口さんが突然会社を辞め郵便物を配る仕事が自分に回ってきたときは、社内でばったり柊二さんに会ったらどうしようかと、そればかり心配していた。けれど実際に配ってみると、がっかりするくらい柊二さんに会うことはなかった。まだ一度も、彼に出くわしたことは、ない。ほっとするような、残念なような複雑な心境だ。

 でも、もう本当のことを言わなければならない。このまま柊二さんを偽り続けることは、できないから。今度柊二さんに会ったとき、ちゃんと正直に全てを話してみようと決心していた。それで柊二さんが私を嫌いになってしまっても、悲しいけれど仕方がない。私が彼を騙していたことは事実なのだから。……彼を忘れることは、とても出来そうにないけれど。

 ロッカーで着替えを済ませてから一度資材部に戻ると、入り口のところに高科さんが立っていた。

「渡辺さん、お疲れさま。今から帰るの?」

「お疲れさまです。はいそうです。高科さんは残業ですか?あ、今日は課で飲み会があるって言ってましたね」

 今朝、休憩をしながら高科さんが飲み会のことを話していたのを思い出す。ということは今日は残業ではないのだろう。

「何か用でしたか?」

 滅多に人が来ない資材部に高科さんがいるとなると、用があってここへ来たと考えるのが普通だ。
 高科さんは首を振った。

「今日の飲み会は延期になったんだ」

「あ、そうなんですか」

「だからと言っては何だけど、渡辺さんを誘いにきたんだ。どう?これから飲みに行かない?」

「え……でも……」

 まさか本当に誘われるとは思っていなかった。それもこんなに突然に。
 今朝の話の中で、私が社内の誰かに片想いをしていると彼に勘違いされてしまったと思ったのは、気のせいだったのだろうか?
 だが、すぐにその答えは分かった。

「渡辺さん、好きな人がいるって言ってもまだ付き合っているわけじゃないみたいだし、だったら構わないよね?僕のことも知って欲しいんだ。ただ少し飲みに行くだけだし、ほら、行こう」

「え、ちょっと待って下さい、高科さん!」

 彼はこんなにも強引な人だっただろうか。
 私は高科さんに半ば引きづられるようにして会社を後にした。





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