この恋、永遠に。
「沢口、絆創膏は持っているか?」
「絆創膏、ですか。会社にならありますが。どうかしたんですか?」
「いや、さっきアイツに爪で引っ搔かれた。ったく、何なんだ、アイツは」
「それはそれは。中々面白いことをしますよね、彼女も」
沢口は俺がアイツに振り回されるのが楽しくて仕方ないらしい。『彼女』の部分を強調すると、くっと小さな声を漏らして笑った。
「面白いものか。同じ爪で引っ搔かれるなら、美緒に付けられる方がいい」
「……そんなことを言っていると渡辺さんに軽蔑されますよ?」
「……ここだけだ」
くそっと舌打ちして頭を後部シートのヘッドレストに預けると目を瞑る。
沢口には美緒のことを話していた。と言っても、孝が面白がって話した、と言った方が正しいのかもしれない。俺も美緒の存在が俺の中で確かなものになったとき、沢口には話すつもりでいたから、丁度良かった。公私共に適切なフォローをしてくれる沢口には、知っておいてもらった方が都合が良い。
美緒の長くてさらさらな黒髪に自分の指を通す様を思い浮かべた。彼女のぱっちりと開いた瞳が次第に潤み、その瞳に映る俺の顔が滲む…。もう何度となく浮かぶ欲望は、彼女の前に出ると見栄を張ってなりを潜めてしまう。俺は未だに彼女に手を出せないでいた。
そんな俺の様子を見た沢口は、その顔に薄い笑みを浮かべるとハンドルを切った。
「専務、着きましたよ。絆創膏は後で用意させます」
会社のエントランスに車を横付けた沢口が、素早く運転席を降りて後部席のドアを開ける。外から流れ込む冷気に一瞬体を震わせた俺は、ゆっくりと車を降りた。
「いや、いい。一階の医務室に寄ってから行く」
「かしこまりました」
背後でドアの閉まる音がすると車が滑り出す。沢口が地下駐車場に車を置きに行っている間に医務室に絆創膏を取りに行けばいい。俺は磨かれたフロアタイルの上で靴音を響かせながら、医務室へと向かった。
「絆創膏、ですか。会社にならありますが。どうかしたんですか?」
「いや、さっきアイツに爪で引っ搔かれた。ったく、何なんだ、アイツは」
「それはそれは。中々面白いことをしますよね、彼女も」
沢口は俺がアイツに振り回されるのが楽しくて仕方ないらしい。『彼女』の部分を強調すると、くっと小さな声を漏らして笑った。
「面白いものか。同じ爪で引っ搔かれるなら、美緒に付けられる方がいい」
「……そんなことを言っていると渡辺さんに軽蔑されますよ?」
「……ここだけだ」
くそっと舌打ちして頭を後部シートのヘッドレストに預けると目を瞑る。
沢口には美緒のことを話していた。と言っても、孝が面白がって話した、と言った方が正しいのかもしれない。俺も美緒の存在が俺の中で確かなものになったとき、沢口には話すつもりでいたから、丁度良かった。公私共に適切なフォローをしてくれる沢口には、知っておいてもらった方が都合が良い。
美緒の長くてさらさらな黒髪に自分の指を通す様を思い浮かべた。彼女のぱっちりと開いた瞳が次第に潤み、その瞳に映る俺の顔が滲む…。もう何度となく浮かぶ欲望は、彼女の前に出ると見栄を張ってなりを潜めてしまう。俺は未だに彼女に手を出せないでいた。
そんな俺の様子を見た沢口は、その顔に薄い笑みを浮かべるとハンドルを切った。
「専務、着きましたよ。絆創膏は後で用意させます」
会社のエントランスに車を横付けた沢口が、素早く運転席を降りて後部席のドアを開ける。外から流れ込む冷気に一瞬体を震わせた俺は、ゆっくりと車を降りた。
「いや、いい。一階の医務室に寄ってから行く」
「かしこまりました」
背後でドアの閉まる音がすると車が滑り出す。沢口が地下駐車場に車を置きに行っている間に医務室に絆創膏を取りに行けばいい。俺は磨かれたフロアタイルの上で靴音を響かせながら、医務室へと向かった。