この恋、永遠に。

それでも君が好き

 綺麗に片付けられたリビングは、淡い色の天然木で全てが統一されている。クロスは使わず、テーブルやチェストなども全て同じような無垢材のものだ。俺の何もない殺風景な部屋とは違い、ここは壁にはたくさんの絵画が、チェストの上には同じように様々な写真が飾られている。見ているだけで溢れる愛が伝わってくる。

「それじゃあ、私は向こうの部屋にいますから。何かあったら呼んでくださいね」

「ああ、ありがとう、真帆」

 ごゆっくり、と言って微笑んで部屋を出て行く彼女は、ちょうど一年前に結婚した孝の奥さんだ。肩甲骨まで伸ばした髪をゆるく巻いている彼女は美人ではないが、愛らしい顔立ちをしている。それぞれのパーツが全体的に小さく、背も小柄なところは美緒に似ていた。

「さて、と」

 テーブルを挟んで向かい合ったソファに腰を降ろした孝が、ウィスキーを注いだグラスを俺の前に置く。チェダーチーズと、真帆さんが作ってくれたスモークサーモンのカナッペも添えてくれた。

「夜分に押しかけてしまって悪いな」

「いや、大丈夫。俺にとってもお前にとってもまだ宵の口だろう?」

 孝の言い分に俺は苦笑した。時刻は既に二十二時を過ぎている。友人宅を訪問するには随分と失礼な時間帯だ。

「真帆さんにとっては違うだろ。後で謝っといてくれ」

「まあ一応伝えるけど、気を遣わなくても大丈夫だよ。お前ならいつでも大歓迎だ」

「ありがとう」

「それで?わざわざ来るってことは、どうせ美緒ちゃんのことだろ?」

 孝は俺の訪問の理由に既に見当をつけていたらしく、本題に迫った。俺もこの時間にはぐらかすつもりはないので単刀直入に聞く。

「ああ。実は今日、美緒に会った……会社で。どうして言わなかった?知っていたんだろう?」

 真正面から孝を見据える。少し咎めるような口調になってしまったことを後悔した。

「……そうだね、知っていたよ。最初から分かっていてお前に話をした。お前に学生だと思わせるように仕向けたんだ」

「なぜ?俊子さんの見合い話を断るだけなら、そんな手の込んだことをする必要はないはずだ。ただ俺に恋人がいることを知らせるだけでいいんだから」

 俺は思わず身を乗り出した。孝はそんな俺には構わず、ウィスキーのグラスを手に取ると、一口喉に流し込む。

「この前少し話したかもしれないけど、この件を思いついたのは、俺の問題と、お前の問題の両方を解決するためだったんだ」

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