この恋、永遠に。
「ああ、聞いたさ。それがどうして……俊子さんの見合い話の件以外にも、理由があったのか?」

「そう。お祖母様の見合い話は、お前の問題だ。俺の問題というのは、美緒ちゃんのことだよ」

「美緒の?」

 さっぱり意味が分からない。孝がどうして歳の離れた美緒のことを気にするというのだろう。

「実は美緒ちゃんは縁故採用なんだ。それもギリギリの」

「美緒が?誰の?」

 俺は人事にはほとんど介入していなかった。しかし仮にも専務だ。コネで入社した社員くらいは把握していたはずである。それがどうして?

「俺は何も報告を受けていないが」

「そうだろうね。もし報告を受けていたら、美緒ちゃんは別の部署に配属になっただろうし」

「美緒の所属は資材部だった」

 つい先ほど、彼女の履歴書を見て、同時に所属も確認した。確かに驚いた。なぜあの部署に配属になったのかが分からなかった。

「そう。新卒の社員があの部署に配属になることは、まずありえない話だと聞いたよ。それなのに彼女はそこに配属された。すぐにピンと来たよ。この件は柊二に知らされていない、ってことがね」

 孝は脚を組むと音がするくらい乱暴に背をソファに預けた。

「美緒ちゃんの入社は僕の口添えなんだ」

「何だって?」

 俺は遅い時間の友人宅を訪問していることも忘れて、つい大きな声を出してしまった。慌てて小声で付け加える。

「美緒はお前のコネで入社したというのか?」

「ああ」

 孝が頷いた。

「何だってそんなこと……美緒はもちろん知っているんだよな?」

 俺の質問に、孝は今度は首を左右に振った。

「美緒ちゃんは知らない。俺が口止めしたんだ。勿論、自分が縁故入社なのは知っていると思うけど。だからあの部署で頑張っているんじゃないかな」

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