この恋、永遠に。
俺も前のめりになっていた姿勢を戻すと、ゆっくりとソファに背を預ける。長い息を吐き出した。
孝の話では、美緒は大学卒業を控え、回りが次々に内定を獲得していく中、中々就職先が決まらなかったそうだ。それを心配した美緒の両親が偶然再会した孝に相談したらしい。
孝も昔面倒を見ていた美緒のためにといろいろ考えた挙句、俺のところに打診したそうだ。ちょうど孝が実家に帰ったときに、俺のところの人事部長が孝の親父さんに新年の挨拶に来ていたらしく、そこで話がついたらしい。その時点で既に時期としては遅すぎるといえたから、孝もあっけなく了承されたことを意外に思ったそうだ。
それから孝は暫く海外出張が続き、俺も丁度その頃、タイでの事業にかかりきりになっていたせいもあり、俺への報告が出来ないまま、彼女の配属が決まったそうだ。
「そういうわけだったからさ、美緒ちゃんの就職にはいろいろ事情があって、俺も責任を感じていたんだ。どんなに忙しくても柊二にメールの一通でも送るべきだったよ。申し訳ないと思ってる」
「…そうだな。まあ、美緒の配属については何か考えるさ。でも、それがなぜあの夜の件と結びつくんだ?」
俺の質問に孝がニヤリと口角を上げる。視線を一瞬、チェストの上の写真に走らせたかと思うと、すぐに再び俺を捉えた。写真は孝と真帆さんの結婚式の写真だ。
「そりゃお前、大抵の女の幸せといったら結婚じゃないか?特に美緒ちゃんみたいなタイプには」
「はぁ?」
「勿論、お前の幸せのためってのもあるけど。白状するとお祖母様の見合いうんぬんは二の次で、美緒ちゃんとお前を引き合わせたかっただけなんだ」
全く悪びれずにそう告白した孝は、自分の思い通りに事が運んだことを満足しているようだ。まるで婚期を逃した息子が片付いて肩の荷が下りたと言わんばかりである。俺はお前の息子じゃないだろ!
「……美緒が学生だと俺に思わせたのは?何を企んでた?」
「ああ、簡単だよ。ああでも言わないとお前は腰を上げなかっただろう?もっともらしくけしかけるのに、必要な嘘だったんだよ」
俺は今度こそ盛大に脱力した。脚を投げ出し両腕をソファーの背もたれに乗せる。
「俺がお前の計画に乗るのも、俺がそこで美緒を選ぶのも、全部お前の計画通りってわけか」
「まあそうなるね。怒った?」
そう聞いてくる孝は白い歯を見せて悪気のない笑顔を見せている。俺が怒っていないのを分かって聞いているのだ。
「本当にお前は策士だよ」
「褒め言葉と受け取っておくよ。…美緒ちゃんのこと、好きなんだろう?」
「………ああ」
「じゃあそう言ってあげないと。彼女、多分待ってるよ」
「ああ、分かってる」
俺はスッキリした気分で立ち上がった。目の前の友人が上着と鞄を渡してくれる。
「ありがとう。こんな遅くに申し訳なかった。真帆さんに謝っておいてくれ。それと、カナッペも美味しかった」
俺は礼を言って友人宅を後にした。時刻は二十三時をとうに回っていた。
孝の話では、美緒は大学卒業を控え、回りが次々に内定を獲得していく中、中々就職先が決まらなかったそうだ。それを心配した美緒の両親が偶然再会した孝に相談したらしい。
孝も昔面倒を見ていた美緒のためにといろいろ考えた挙句、俺のところに打診したそうだ。ちょうど孝が実家に帰ったときに、俺のところの人事部長が孝の親父さんに新年の挨拶に来ていたらしく、そこで話がついたらしい。その時点で既に時期としては遅すぎるといえたから、孝もあっけなく了承されたことを意外に思ったそうだ。
それから孝は暫く海外出張が続き、俺も丁度その頃、タイでの事業にかかりきりになっていたせいもあり、俺への報告が出来ないまま、彼女の配属が決まったそうだ。
「そういうわけだったからさ、美緒ちゃんの就職にはいろいろ事情があって、俺も責任を感じていたんだ。どんなに忙しくても柊二にメールの一通でも送るべきだったよ。申し訳ないと思ってる」
「…そうだな。まあ、美緒の配属については何か考えるさ。でも、それがなぜあの夜の件と結びつくんだ?」
俺の質問に孝がニヤリと口角を上げる。視線を一瞬、チェストの上の写真に走らせたかと思うと、すぐに再び俺を捉えた。写真は孝と真帆さんの結婚式の写真だ。
「そりゃお前、大抵の女の幸せといったら結婚じゃないか?特に美緒ちゃんみたいなタイプには」
「はぁ?」
「勿論、お前の幸せのためってのもあるけど。白状するとお祖母様の見合いうんぬんは二の次で、美緒ちゃんとお前を引き合わせたかっただけなんだ」
全く悪びれずにそう告白した孝は、自分の思い通りに事が運んだことを満足しているようだ。まるで婚期を逃した息子が片付いて肩の荷が下りたと言わんばかりである。俺はお前の息子じゃないだろ!
「……美緒が学生だと俺に思わせたのは?何を企んでた?」
「ああ、簡単だよ。ああでも言わないとお前は腰を上げなかっただろう?もっともらしくけしかけるのに、必要な嘘だったんだよ」
俺は今度こそ盛大に脱力した。脚を投げ出し両腕をソファーの背もたれに乗せる。
「俺がお前の計画に乗るのも、俺がそこで美緒を選ぶのも、全部お前の計画通りってわけか」
「まあそうなるね。怒った?」
そう聞いてくる孝は白い歯を見せて悪気のない笑顔を見せている。俺が怒っていないのを分かって聞いているのだ。
「本当にお前は策士だよ」
「褒め言葉と受け取っておくよ。…美緒ちゃんのこと、好きなんだろう?」
「………ああ」
「じゃあそう言ってあげないと。彼女、多分待ってるよ」
「ああ、分かってる」
俺はスッキリした気分で立ち上がった。目の前の友人が上着と鞄を渡してくれる。
「ありがとう。こんな遅くに申し訳なかった。真帆さんに謝っておいてくれ。それと、カナッペも美味しかった」
俺は礼を言って友人宅を後にした。時刻は二十三時をとうに回っていた。