この恋、永遠に。
愛してる
どれくらいそうしていたのだろうか。私はベッドに身を投げ出したまま、ぐったり弛緩していた体を起こした。瞼が重い。
のろのろと洗面所に移動すると鏡に映った自分を見て苦笑する。
ひどい顔だ。泣き腫らした瞳は真っ赤に充血し、瞼が膨れ上がっている。明日までに元に戻るだろうか。
私は急いでタオルを冷やして瞼に当てた。廊下で柊二さんに会ったときのことを思い出す。同じ会社にいるのだ。いつこんな事態になってもおかしくはなかった。
こうなる前に、自分の言葉で説明しなかったことが悔やまれる。いつか話さなければならないと、ずっと悩んでいた。そして話す決心をしたはずだった。あの時までは。
私の頭の中で未だ鮮明に浮かぶ、柊二さんに寄り添う女性の姿。彼女のことが頭から離れない。きっと何か事情があるのだと思い込もうとしても、もしかしたらという恐怖に駆られて私は自ら柊二さんへの連絡を絶っていた。自分から連絡することはおろか、彼からの電話にも出られないでいたのは、決定的な答えを知るのが怖い、その一言に尽きた。
でも、こんな形で私の嘘が知られてしまうなら、そんなことで悩まずに早く連絡してしまった方がよかったのだ。あの女性が誰なのかを聞いて、私が本宮商事の社員であることを打ち明ければよかったのだ。
自分が傷ついているのと同じように、私の嘘は、彼も傷つけたに違いない。
今更後悔しても、遅いのだが。
私はタオルをもう一度冷やして固く絞ると、リビングに戻った。リビングと言ってもこの部屋は1DKだ。テレビも、小さなリビングテーブルもチェストもベッドも、全てが一つの部屋に集結している。柊二さんの広いマンションとは大違いだ。
タオルを小さく折りたたんだ私は一度ベッドに仰向けで横たわり、瞼にタオルを当てた。
視界が暗くなると夕方の光景がぐるぐると目まぐるしく思い出される。高科さんと一緒にいたところを見られて、もしかしたら柊二さんも誤解をしたかもしれない。私が社員であることを黙っていて、高科さんと何か関係があると思われてしまったかもしれない。
もし、誤解をされたならそれを解きたいと思うが、今更何を説明すればいいのだろう。全てが遅すぎる気がした。
せっかく冷やした瞼の下で、再び涙が滲む。泣く資格なんて、私にはないのに。
インターホンが鳴った。目を瞑ったままビクリと体を強張らせる。動けないでいると、それはもう一度鳴った。
時刻はもう深夜だ。こんな時間の来客に私は見当をつける。心臓がドクドクと不安な時間を刻み始めた。
ゆっくり起き上がり玄関に向かうとドアスコープからそっと外を窺う。案の定そこにいたのは、柊二さんだった。
「美緒、いるんだろ?開けてくれないか」
私がドアを開けることができないでいると、隣を憚ってか、柊二さんが控えめな声を出した。
「美緒?」
柊二さんが来てくれた。優しげな声で私の名前を呼んでいる。
彼が今日ここに来たのは、夕方の件に違いない。騙されて怒っているはずなのに、彼の声はいつもと同じ、優しい響きを持っていた。
私はドアチェーンを外すと、静かにドアを開けた。
「………柊二さん」
のろのろと洗面所に移動すると鏡に映った自分を見て苦笑する。
ひどい顔だ。泣き腫らした瞳は真っ赤に充血し、瞼が膨れ上がっている。明日までに元に戻るだろうか。
私は急いでタオルを冷やして瞼に当てた。廊下で柊二さんに会ったときのことを思い出す。同じ会社にいるのだ。いつこんな事態になってもおかしくはなかった。
こうなる前に、自分の言葉で説明しなかったことが悔やまれる。いつか話さなければならないと、ずっと悩んでいた。そして話す決心をしたはずだった。あの時までは。
私の頭の中で未だ鮮明に浮かぶ、柊二さんに寄り添う女性の姿。彼女のことが頭から離れない。きっと何か事情があるのだと思い込もうとしても、もしかしたらという恐怖に駆られて私は自ら柊二さんへの連絡を絶っていた。自分から連絡することはおろか、彼からの電話にも出られないでいたのは、決定的な答えを知るのが怖い、その一言に尽きた。
でも、こんな形で私の嘘が知られてしまうなら、そんなことで悩まずに早く連絡してしまった方がよかったのだ。あの女性が誰なのかを聞いて、私が本宮商事の社員であることを打ち明ければよかったのだ。
自分が傷ついているのと同じように、私の嘘は、彼も傷つけたに違いない。
今更後悔しても、遅いのだが。
私はタオルをもう一度冷やして固く絞ると、リビングに戻った。リビングと言ってもこの部屋は1DKだ。テレビも、小さなリビングテーブルもチェストもベッドも、全てが一つの部屋に集結している。柊二さんの広いマンションとは大違いだ。
タオルを小さく折りたたんだ私は一度ベッドに仰向けで横たわり、瞼にタオルを当てた。
視界が暗くなると夕方の光景がぐるぐると目まぐるしく思い出される。高科さんと一緒にいたところを見られて、もしかしたら柊二さんも誤解をしたかもしれない。私が社員であることを黙っていて、高科さんと何か関係があると思われてしまったかもしれない。
もし、誤解をされたならそれを解きたいと思うが、今更何を説明すればいいのだろう。全てが遅すぎる気がした。
せっかく冷やした瞼の下で、再び涙が滲む。泣く資格なんて、私にはないのに。
インターホンが鳴った。目を瞑ったままビクリと体を強張らせる。動けないでいると、それはもう一度鳴った。
時刻はもう深夜だ。こんな時間の来客に私は見当をつける。心臓がドクドクと不安な時間を刻み始めた。
ゆっくり起き上がり玄関に向かうとドアスコープからそっと外を窺う。案の定そこにいたのは、柊二さんだった。
「美緒、いるんだろ?開けてくれないか」
私がドアを開けることができないでいると、隣を憚ってか、柊二さんが控えめな声を出した。
「美緒?」
柊二さんが来てくれた。優しげな声で私の名前を呼んでいる。
彼が今日ここに来たのは、夕方の件に違いない。騙されて怒っているはずなのに、彼の声はいつもと同じ、優しい響きを持っていた。
私はドアチェーンを外すと、静かにドアを開けた。
「………柊二さん」