この恋、永遠に。
「あの夜、俺は孝に呼び出されていてね。何というか、俺が恋人も作らずフラフラしているものだから、孝のお祖母様から頻繁に見合いを勧められていたんだ。それを断る口実を作るために、俺の恋人として自然に振舞えそうな子を探していて、美緒を誘った…。孝にけしかけられたとはいえ、俺はあの時、確かに軽い気持ちで美緒を誘ったんだ」

「恋人役……ですか」

 私が呟くと、柊二さんは少し眉尻を下げた。

「言い訳になるけど、振りをするためじゃない。本当の恋人として美緒を誘った。だけど、そうだね……確かに真剣に誘ったとは言えないな。あくまで見合いを断る口実作りだった」

 はっきり告げられる真実に、私は大きなショックを覚えた。自分だって彼を騙していたのに、彼から聞かされた話に私は動揺する。
 お見合いを断る口実作りで私を誘った。それは誰でも良かったということだろう。たまたまそこに、私がいた。それだけなのだ。
 私が大学生ではなく、彼の会社の社員だと知れた以上、この関係は終わるのかもしれない。
 そう思うと、彼の話に何か反応を返したいのに、それが出来ないでいた。

「美緒は、こんな俺は嫌いになった?」

 不意に柊二さんが私の顔を覗き込んできた。間近で見つめられ、私の心臓が跳ねる。彼は切なげな眼差しで微笑み、私に答えを促した。
 嫌いになんか、なれるはずがない。こんなにも好きになってしまった彼を、どうして嫌いになれるというのだろう。
 私は勢いよく首を左右に振った。

「嫌いになんて、なれません……」

「……そう。じゃあ、俺と、同じだね」

 驚いて見上げると、彼が柔らかく微笑んでいる。
 柊二さんと同じ?嫌いになれないことが、同じ?それって……。

「美緒が好きだよ。最初は確かに軽い気持ちだったけれど、君を知っていくうちに、どんどん惹かれていった。今日会社で君を見たときも、何故君が会社にいるのかということよりも、一緒にいる高科の存在が気になったくらいだ。俺は、君が好きだ」

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