この恋、永遠に。
「嘘………」

「嘘じゃない、本当だよ。正直、俺がこんな気持ちになるなんて、俺自身が戸惑っているくらいだ」

「じゃあ、あの女の人は……」

 私の脳裏に、数日前に見かけた柊二さんに寄り添う女性の影がちらつく。背の高い柊二さんに見劣りしない完璧なスタイルで、彼に腕を絡ませてしなだれかかる彼女は本当にお似合いに見えた。私よりもずっと……。

「女?」

 柊二さんが眉根を寄せる。本当に思い当たる節がないといった様子で、演技をしているようには見えない。あれは、見間違いだったというの?

「あの、実は偶然見かけたんです…。会社の近くで、柊二さんに寄り添って歩く女性を。私と違って背が高くて、とてもお似合いに見えました……」

「会社の近く……それはいつ頃?」

「先週…です。ちょうど高科さんに食事に誘われて帰る途中で……あ、でも、高科さんとはそれだけです。食事をしただけですぐ帰りましたし、これからははっきり断れるようにが、頑張ります……」

 隣に座った柊二さんがくすりと笑う気配がした。その大きな手で頭を優しく撫でられる。

「うん、そうだね。高科と食事はもう駄目だ。でも、そうだな……」

 柊二さんはちらりと私を見やると、少し考える素振りをした。

「美緒はどうやら断るのが苦手なようだから、俺から一言釘を刺しておくよ」

「え?」

「何て言おうか?美緒は俺の恋人だから手を出すな、とか?それとも、この際だから全社に公表してしまおうか。うちの会社は社内恋愛を禁止しているわけじゃないしね」

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