この恋、永遠に。
「それで、渡辺さんのそれは、専務がらみなんだろう?」

 やはり話題のネタは柊二さんだった。私も高科さんには隠すつもりはなかったので、素直に頷く。

「もうすぐクリスマスだもんね。その関係?専務ならきっとすごいクリスマスを演出してくれるんじゃない?」

「あ……、そうですね、クリスマスですよね」

 私は思い出したように微笑む。忘れていたわけじゃなかったけれど、今の私はもっと別のことで浮かれていたから。

「何、忘れてたの?」

「そんなことないですよ」

「じゃあやっぱり約束してるんだよね?どんなデートするの?やっぱ一流フレンチの後は一流ホテルとか、そんな感じ?」

「し、知りませんよ……。しゅ…専務は何も教えてくれないですし…。今年は平日だから、時間も本当に取れるかどうか分かりませんし」

 クリスマスの夜を連想してしまい、私はすぐに頬を赤らめた。デートの約束はしているけれど、彼は迎えに行くと言っただけで、どこへ行くとは教えてくれなかった。そんな私を高科さんがニヤニヤと口角を上げて眺めている。

「ふうん」

「何ですかっ」

「いや、妬けるなーと思って」

 自分のコーヒーを飲み干した高科さんが、テーブルの上に両肘をつくと顎を乗せた。

「も、もう…。からかうのはなしですよ」

「本当だって。知ってるでしょ、僕が渡辺さんのこと好きだったの」

「でも、もう過去形じゃないですか。そんなことばかり言ってると、いくら高科さんでも振られちゃいますよ」

 私はわざと少し唇を尖らせてみせた。高科さんもそんな私を見て声を出して笑う。もう私のことは何とも思っていないらしい。何となく罪悪感から逃れられたようで、私もほっとする。これで高科さんも、高科さんのことを好きな誰かと結ばれてくれるといいのだけれど。

「じゃ、僕はもう行くね。またね、渡辺さん」

「あ、はい。お疲れ様です。ごちそうさまでした」

 最後に私の頭をぽんぽん、とあやすように軽く叩いて去っていく高科さんの姿を見送りながら、私はぼんやりと考えていた。
 以前高科さんと話す私を睨んでいた斉藤さん。彼女とはどうなっているのかな…。


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