この恋、永遠に。
「柊二にも連絡したけど、繋がらない。ひとまず留守電に残しておいたから折り返し連絡はあるはずだけど」

 沢口さんの口調が秘書のそれではなくなっていた。彼はもとは柊二さんの幼馴染なのだ。これが普段の沢口さんなのだろう。

「美緒ちゃん……もう、大丈夫だから……」

 孝くんが震える私の体をそっと抱きしめてくれた。彼にとっては私はいつまでも小学生のままなのだろう。小さな妹をあやす感覚で抱きしめられると、私は素直にそれに甘えてしまう。けれど震えは治まらない

「……あ、あ……わ、わた………し………」

 やっとの事で声を発しても、うまく言葉にならない。歯と歯が噛み合わないのだ。歯だけじゃない。体の震えが一向に収まらず、暖かい車内なのに、まるで極寒の地に裸で立っているような感覚だ。
 先ほど目の前に広がった光景が、荒らされた室内が私の脳裏に蘇り、恐怖がこみ上げて体は凍りついたようになるのに、不思議と涙は出ない。涙まで凍ってしまったみたいだ。

「美緒ちゃん……」

「渡辺さん……」

 二人に心配を掛けているということは分かるのに、どうすることもできない。しっかりしないと。今は柊二さんもいないのだ。これ以上二人に迷惑を掛けるわけにはいかない。しっかりして……。


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