この恋、永遠に。

悪夢

 日本を発ってから三日が過ぎた。美緒はどうしているだろうか。
 こんなにも出張を疎ましく思ったことは初めてだ。彼女と離れている時間がこれ程までに苦しいなんて。

 なるべく早く片付けて帰りたかった俺は、スケジュールを極力前倒しにして精力的に仕事をこなしていた。愛しい彼女に連絡を取ることもままならないが、早く会いたくて仕方がない。あの小さくて華奢な体を俺の腕の中に閉じ込め、一晩中甘やかしてやりたい。
 彼女には一週間で戻ると伝えてあるが、出来ればもう少し早めに戻りたかった。彼女よりも、俺の方が限界なのだ。

 俺はその日の仕事を終え、夜からの会食に備えてシャワーを浴びていた。今回の出張には沢口を同行させていない。いつもであれば沢口を同行させるところだが、今は美緒がいる。俺の留守の間を任せられるのは沢口しかいないと思い、彼を残して別の秘書を連れてきていた。こんな俺を彼女は過保護だと笑うだろうか。

 シャワーを浴び終わったところで、スマホに着信があるのに気づいた。確認すると当の沢口からだ。滅多なことでは連絡してこないはずだと、俺の脳が警告を発する。嫌な胸騒ぎを感じて俺は恐る恐る留守電に残されているメッセージを聞いた。



 成田に着いた俺はすぐに迎えの車に飛び乗った。時折巻き込まれる渋滞に俺は焦燥する。この時間がもどかしい。今すぐにでも美緒の元に行かなければならないのに。
 留守電に残された沢口からのメッセージは、俺を愕然とさせた。

 美緒のアパートが荒らされ、彼女はショックで口も聞けない状態だという。警察からの事情聴取にも答えられる状態ではなく、食事も、水でさえほとんど口にしないという。会社は沢口の判断で有給扱いとし、今は孝の自宅でお世話になっているらしい。孝の家なら安心だが、問題は美緒の状態だ。このままでは彼女は参ってしまう。

 こんなときに日本を離れていた自分に腹が立つ。仕事だとはいえ、彼女あってこそのものだと思える。俺には、美緒が必要だ。絶対に。
 渋滞で列を作るテイルランプを眺めながら、俺は拳をぎゅっと握り締めた。


「美緒!」

 孝の家に着いた俺は真帆さんに案内され、急いで美緒の元に向かった。彼女は一階のゲストルームでお世話になっているらしい。
 ドアを開けて中に入ると、ベッドの上で彼女はシーツに包まって座っていた。真帆さんが言うには、もうあれからずっと、こうしているという話だ。

 あれからずっと、だと?
 沢口の留守電を確認したとき、俺はインドネシアにいたから、日本との時差は二時間。現地時間で十七時頃だったから、美緒が荒らされたアパートに帰宅したのは日本時間で十九時頃だ。その後沢口と孝に保護された美緒が孝の家に来たと考えて恐らく時間にして二十一時、いや、二十二時頃だろうか。
 俺はすぐに日本に戻りたかったが叶わず、結局俺が飛行機に乗れたのは日本時間で翌々日の十五時なのだ。その間、ずっとこの状態だというのか…。

「美緒……」

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