イジワル王子の甘い嘘
「え、あ……愛斗くん……」
すっかり自分の世界に入っていたので気が付かなかったけど、私の目の前には愛斗くんがいた。
額には少しだけ汗のあとが見える。
王子は、汗をかいても王子なんだね。
何の取り柄もない私と比べてしまって、少しだけそんな自分が嫌になる。
「莉奈、帰れるか?」
「うん、大丈夫。愛斗くんこそ、部活終わったの?」
「ああ。次の試合は新入生が来てからの新人戦だからな。今は新入部員の勧誘について話し合ってる」
だからか。
いつも夜遅くまでバスケ部は部活しているのに、こんなに明るい時間に愛斗くんが帰れるのは。
「新入部員のこと考えててもさ、やっぱり体は動かしたくて、少しだけ自主練してた」
「エースさんは大変だね」
「常に努力しないと、簡単に抜かされるからな」
「ほら、帰るぞ」と、愛斗くんは私のカバンを手に取った。
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