イジワル王子の甘い嘘
あの雰囲気の中に取り残されるのは嫌だった。
きっと、愛斗くんは今私が置かれている状況を知らない。
だって、女子たちは愛斗くんの前ではうまいこといい子を演じているし、私と仲良くしている風に装っているから。
とてもじゃないけど、愛斗くんにはこんなこと話せないよ。
……もう、学校に行きたくない。
考えるだけで恐ろしくなる。
下駄箱について、急いで靴を出していると
「なんで先帰るんだよ」
私を追いかけてきたのか、息を切らした愛斗くんがいた。
そういえば愛斗くんには、私のカバンを持ってもらっていた。
どっちみち、ひとりで帰ったとしてもカバンがないと意味ないじゃん。バスの定期だって入ってるし。私のバカ……。
「ちょっと、具合が悪くなって……」
「大丈夫なのかよ、莉奈」
「うん。大丈夫。だけど愛斗くんに迷惑かけるわけにはいかないから、先に帰ってて?私は休憩しながら帰るから」