イジワル王子の甘い嘘
愛斗くんの手のひら、落ち着くなあ。
大きな手のひらに、小さな頃から変わらない、心地よい体温。
「俺が王子とか、そんなん気にすんな。莉奈は莉奈なんだからさ」
愛斗くんは私の頭から手を離し、1人で歩いて行ってしまった。
……あ、私のカバン、愛斗くんが持ったままだ。
結局、私は愛斗くんと帰るはめになるんだね。
でもやっぱり、愛斗くんは優しい。私にはもったいないくらいの優しさを向けてくれる。
「……愛斗くん、待ってっ!」
私は愛斗くんを追いかけて、走り出した。
――私の幼なじみは、学校中の王子様。
そんな“王子”のせいで、ちょっとだけ不自由な学校生活を送っているけど、やっぱりこの幼なじみとは縁を切れそうにありません。
「莉奈、明日も一緒に帰るからな」
「え……でも……」
「俺の言うこと、聞けねぇの?」
「……ごめんなさい。分かった」
辺り一面には、夕焼けが広がっていた。