イジワル王子の甘い嘘
「あ、そういえば……」
「どうしたの?」
「俺、部活の格好のままだった」
自分の服装を見ると、ジャージにTシャツ姿。そういえば更衣室に向かう途中に莉奈の声が聞こえてきて、慌てて助けに入ったんだった。
急な出来事で、すっかり忘れていた。
「今から着替えてくるから、莉奈は教室で待ってて」
「え?でも……。私ひとりでも帰れるよ?」
いつものように俺と帰ることを拒否する莉奈。
だけど、もう莉奈を危ない目に遭わせるわけにはいかないから。
「だーめ。大人しく待ってな?先に帰ったらお仕置きするからな?」
「え?お、お仕置き?」
「嫌なら大人しくしとけよ?じゃ、また後で」
あたふたする莉奈をよそに、俺は空き教室を出て着替えるために改めて更衣室へ向かった。
――俺の幼なじみは、鈍感で天然でモテるヤツ。
そんな“幼なじみ”のために、今日も俺は全力をかけて莉奈を守らなければいけないんだ。
本当にしょうがないヤツだ、俺の幼なじみは。