イジワル王子の甘い嘘



本当は否定したい。


みんなの前に堂々と出て、「愛斗くんはただの幼なじみだよ、私を守ってくれるためについた嘘なんだよ」って伝えたい。


だけどただでさえ嫌われている私が言うと、みんなからすれば嫌味を言っているように思われて、もっと言葉のトゲを刺してくる。


……今以上に傷つきたくない。


小心者の私は、心では否定できても、みんなの前に出て発言することが出来なかった。




「でもなんで若原さんなの?幼なじみってだけじゃん!」



「ほんとそれ!絶対に心の中であたしらのことバカにしてるでしょ!」



「相変わらず若原さんは性格悪いね」




クスクスと私を笑っている女子たちに何も言い返せないまま、読書をしているフリをする。



――今日と明日この環境に耐えれば、あさってからは春休みが始まる。


そして新学期が始まれば学年も上がり、クラス替えもある。


きっと今みたいに悪口を言ってくるひともいるだろうけど、今の環境から逃げられるんなら、そっちのほうがよっぽどいい。



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