イジワル王子の甘い嘘
***



そんなことを思いながら過ごした1日は、いつも通り女子たちに睨まれながら過ぎていった。


今日は愛斗くんとすれ違うことがなかったため、私は授業が終わるとすぐに教室を飛び出し、家の近くの書店に来ていた。


あと1日乗り切れば春休みとはいえ、その1日を乗り切るためには新しい本が必要だった。


文庫コーナーに立ち寄り、新作や注目作をチェックする。

そして、好きな作家さんの最新作を見つけ、手に取ったとき。




「こんな時間までいつも本屋にいるんだな」



「え……?」




斜め上から、聞こえてくるはずのない声が聞こえてきた。

恐る恐る声のした方に顔を向けると。




「あ……愛斗くん!!」




部活終わりの愛斗くんが、いつの間にか私の横に立っていた。


ネクタイを少し緩めた愛斗くんは、通学カバンを持って私の持っている文庫本をまじまじと見ている。


……だけど、ちょっとまって。

なんでここに愛斗くんがいるの?


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