イジワル王子の甘い嘘
帰るのが遅くなるのを心配した愛斗くんが、私の腕を引っ張ってレジへと向かいだす。
「ちょっと、ひとりで歩けるから!」
「いーや、このまま一緒に連れて帰らないと、莉奈は延々とここにいそうだから」
確かに、私にとって書店は時間を気にせずにいれる場所で、
学校から解放された私が、唯一自分を出せる場所。
レジは少し混んでいた。
私と愛斗くんは、列の一番後ろに並んで会計を待つ。
「莉奈は本当に読書が好きなんだな」
その言葉に胸がズキンと痛んだ。
……愛斗くん、私が本を読むのはただ単に読書が好きなだけじゃないよ。
私への悪口を聞かないために、女子たちに目立たないためだけにやっていることなんだよ、って。
そんなこと言えるわけなく、私はごまかすように「うん」と返事をした。