イジワル王子の甘い嘘



「来週から莉奈は春休みでしょ?お父さんとお母さん、旅行に行ってきてもいい……?」




私に懇願する様子を見せるお母さんに、私はいつも通りニッコリと笑って頷いた。


お父さんとお母さんは、娘の私から見てもすごく仲がいい。


娘が高校生になった今でも、時々ふたりでデートしたり旅行に行ったりとラブラブ。普段は無口なお父さんのほうがお母さんにぞっこんって聞いたときは、人は見かけによらないんだなと改めて思った。


そんないつまでも仲がいいお父さんとお母さんのことを、私は誇らしく思っている。

だから旅行に行くと言われても、素直に言ってらっしゃいと言える。




「お土産は絶対買って来てね」



「もちろんよ。今回も莉奈には迷惑かけるけど、お留守番よろしくね」




少し恥ずかしそうに微笑むお母さんを少しうらやましく思いながら、私は朝食を食べ終えた。


――お父さんとお母さんは、本当にお互いのことを想い合ってるんだな。

私もいつか、そんな相手に巡り合えるかな?

そう自分に問いかけてみても、今の私には誰の顔も思い浮かばなかった。


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