イジワル王子の甘い嘘



今日もいつもと同じ時間に家を出て、いつもと同じバスに乗って、いつもと同じ道を歩いて。

学校に近付けば近付くほど、同じ制服を着た人影が多くなっていく。


そんな毎日見慣れた風景も、いったん今日でおしまい。

次この道を歩くときは、私は2年生になっている。


2年生になっても、私はきっと周りに気を使いながら目立たないように過ごしているだろうけど、少しでもこの制服に馴染んでいたいな。


今日は午前中だけ授業があって、午後から体育館で終業式で終わりの予定。

終業式で愛斗くんを見かけるだろうけど、そこはいつも通り目立たないように姿を隠していれば大丈夫。


そんなことを考えながら、昇降口で靴を履き替える。

1日のスケジュールを確認して、自分自身に頑張ろうと喝を入れた時だった。




「若原さん、おはよう!」



「お……おはよう……」




同じ靴箱を使っているひとで、私に気軽に話しかけてくる人なんていない。


声をかけられたから、思わず反射的に挨拶してしまったけど、一体誰が私のことを呼んだの?

疑問を持ちながら目線を上げていくと。




「え……?あ、あの……」



「ちょっと若原さん、用事があるから一緒に来てくれる?」


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