イジワル王子の甘い嘘
ガタンと大きな音が鳴ったと同時に、強く押された身体がすこしよろめいた。
大きな音の正体は、背後にある机が私の背中に当たったから。
ここは移動教室の際にしか使われていない旧棟。さらにほぼ人通りがない3階の空き教室。
私自身、あまり旧棟の3階に来たことがないから、ここが普段何に使われている場所なのかも分からない。
そして今、私の目の前にはいつもの見慣れたメンバーが立っていた。
「ははっ。声かけたら本当に着いてくるなんてね。もっと危機感持ったほうがいいんじゃないの?」
「それとも、“私には幼なじみの王子がいるから平気~?”なんて余裕抜かしてた?」
「アンタに声かけるヤツがいるわけないよね。自分のこともっと見つめなおせば?」
そうやって私のことをバカにするようにクスクス笑っているのは、同じクラスの愛斗くんファンだ。
いつも率先して私の悪口を発している、3人組の派手な女子たち。
髪は金髪に近いくらいに明るい茶髪で、シルバーのネックレスとピアスがキラキラと主張を繰り返している。
爪には派手なネイルが施されていて、地味な外見の私とは180度違う世界で生きている、“クラスの中心の女子”だった。
本当に、なんで着いてきてしまったんだろう。
おかしいとは思ったけど、こんな展開になるとは思わずに、素直に彼女たちに着いていくという選択をした数分間の私に戻りたい。