イジワル王子の甘い嘘
直樹が発した“莉奈ちゃん”という言葉に、俺の脳裏にあることが蘇る。
「そういえばさ、今日莉奈のやつ学校に来てないみたいなんだよな」
「え?いつも可愛くて、俺のハートを掴んで離さない莉奈ちゃんが?」
その言葉に目の前の金髪ヤンキーを睨んでみせると、「冗談だよ、冗談」と直樹は笑いながら俺に無実を訴える。
直樹の冗談は、冗談に聞こえないから困る。
そんな俺の様子に、直樹はニヤニヤと嬉しそうに笑った。
「やっぱり愛斗って、莉奈ちゃんのことになるといつも必死だな。からかいがいがある」
「お前、俺で遊んでんのか」
「うん、遊んでるよ。だってこんなに面白い遊び道具ないもん」
こいつ、俺のことを“遊び道具”と言いやがった。
マジで覚えとけよ……?
少しイライラしてきたところで、直樹が話を戻すように口を開いた。
「でも莉奈ちゃんが学校にいないなんて、不思議な気分だな。いつも愛斗に引っ付いて莉奈ちゃんのこと見てたから、なんか心配」
「俺もすっげー違和感。とりあえず莉奈に連絡しとく」
直樹が脱線した話を戻してくれたおかげで、俺は莉奈に連絡を入れていなかったことに気付く。