イジワル王子の甘い嘘



暴言が飛び交っていた教室は、一瞬にして静まりかえる。


突然の俺の登場に、びっくりしつつも気まずそうな顔をする莉奈と、顔から血の気が引いていくような表情を浮かべる女子生徒3人組が、一気に俺と直樹の方を見たのが分かった。




「莉奈、大丈夫か?」



「う、うん!だけどなんで愛斗くんがここに――」



「その話は後でしような、莉奈」




罵声を浴びることに慣れていたのか、表情は疲れているが思ったよりも莉奈は元気そうだった。

怪我もしていないようだし、本当によかった……。


俺は莉奈のことを守るように、女子生徒3人組の前に立つ。

いつもの威勢のよさは消えていて、身体が震えているのが分かった。




「俺の質問に答えてもらってもいい?いつから莉奈をここに?」



「……朝、です」




朝?俺は朝、こいつらに莉奈の所在を聞いたはずだけど。




「もしかして、嘘ついてた?俺、今日莉奈の居場所を聞いたよな?そのときは風邪かなんかじゃないか、って答えてたけど」



「そ、それは――」



「俺、嘘つくヤツ大っ嫌いなんだけど。ちゃんと白状しろよ」




思いっきり女子生徒3人組を睨みつける。本当はもっと酷い目に遭わせてやりたいけど、莉奈がいる以上、そんな真似は出来なかった。


しばらく睨みつけていると、女子生徒のリーダー格らしき女子が口を開いた。




「嘘、ついたよ!!だって……王子、いつも若原さんばっかり気にしてるんだもん!私たちのことも少しは見てくれたっていいじゃん……!」




……なんだよ、それ。

そんなくだらない理由で、莉奈はずっとこいつらに苦しめられてたってこと?


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