イジワル王子の甘い嘘
……だけど、その必死な願いは無駄に終わる。
「莉奈。こっちこい」
“王子”は廊下越しから、なぜか私を指名してきた。
やだ。愛斗くんったら、何言ってるんだろう。
いつも私には話しかけないでって言ってるのに。
愛斗くんには悪いけど、無視するのが一番!
そう心に決めて、私は読書に夢中で聞こえないフリをする。
それでも“王子”は諦める気はないみたいで、
「……莉奈、聞こえてるんだろ?」
「……ッ」
「無視か。俺を無視するとはいい度胸じゃん」
怪しくニッと笑うと同時に、愛斗くんの前では愛想良くしている女子たちが、一斉に声を掛けてきた。