イジワル王子の甘い嘘
「閉じ込められたからヒマでヒマで仕方なくて、ずっと本読んでた。あ、お昼はお弁当がカバンの中に入ってたからそれ食べたんだよ!」
「お前、怖かったんじゃないのか……?」
「怖かったけど、なるようになるかなと思って。いざとなれば大声だって出せたし、スマホから助けを呼ぶことだって出来たわけだから」
思った以上に、莉奈が強くなっていて、その凛とした姿に思わず目を奪われる。
いつの間にか莉奈は、俺が知らない以上に魅力的になっていたみたいだ。
「だけど……」
「どうした?」
「愛斗くんに知られたくなくて、わざと連絡しなかった」
俺から視線を逸らして、少し悲しそうにフフッと笑った莉奈を見て、いますぐにでも抱きしめたくなる衝動に駆られた。
ごめん。俺のせいで、ずっと辛い目に遭ってたんだな。
苦しい気持ちを思い出させないように、莉奈から話してくれるまで細かいことは問いたださないでいようと思う。
「愛斗くん」
「なに?」
「私のこと、助けてくれてありがとう……」
莉奈。もうお前のこと、“幼なじみ”なんて思ってないから。
自分の気持ちは後回しにして、俺のことばっかり考えていて。常に自分を犠牲にしている莉奈を、これからは俺が守りたいと強く思った。
「終業式、行けるか?」
「うん」
簡単な会話だけを交わし、俺たちは空き教室を後にした。
――明日からは春休みだ。