イジワル王子の甘い嘘
肩身が狭い高校生活を送っている私だけど、ちゃんと友達はいる。
これから会う約束をしている結衣ちゃんもそのひとりだ。
同じ小学校と中学校に通っていた結衣ちゃんは、私が愛斗くんの幼なじみと知っていても態度を変えずに接してくれる、数少ない友達。
どうしても家の近くの学校がよかったみたいで、高校は離れ離れになってしまった私たちだけど、こうやって長期休みの時には必ず約束をして会っている。
「はやく結衣ちゃんの話が聞きたいな」
やっぱり遊びに出掛けるのは楽しみで、浮かれた心を抑えながら準備を進める。
ホワイトの春ニットとスキニーを身に着けた私は、ブルーのパンプスを履いて家を出た。
春はやっぱりウキウキする。お正月に貰ったお年玉もとってあるし、先月分のお小遣いだってまだ残っている。
今日は新しい服が欲しいからお買い物でもしたいな、と思いながら歩いていると、愛斗くんの家の前を通りかかった。
当然ながら愛斗くんは春休み中はほとんど部活で、毎日学校に行っている。
だから、毎日だらだらと家で過ごしている私と違って、部活で忙しそうな愛斗くんとは、終業式の日から会っていない。
助けてくれたその後に愛斗くんはなぜか忙しそうに空き教室を出て行ってしまったし、帰り道だって珍しくバラバラだった。
きっと、私が悪口を言われている原因が自分だったって知ってしまったから、気まずくなってるんじゃないかと思う。
いまだに心の中にはっきりと残っている。あの時、私の前に現れた時、とても辛そうな表情を浮かべていたから。
だから、愛斗くんにはばれないように必死に隠していたのに。
終わりは案外、あっけなかった。
それから私は、愛斗くんの顔だって見てないし、声だって聞いてない。
「って、考え事してる暇なかった!遅れちゃう……!」
頭をブンブンと振り、今まで考えていたことを抹消すると、小走りで待ち合わせ場所へと向かった。