イジワル王子の甘い嘘
「若原さん、王子が呼んでるよー?」
「はやくこっち来なよ!」
さっきまで私の悪口を言って笑ってた女子たちは、愛斗くんの前ではよく見られたいからって、にこやかに話しかけてくる。
だけど、愛斗くんがいなくなれば、どうせ私の悪口を言うに決まってる。
そんな女子たちの変貌ぶりを目の当たりにし、心の中で嫌だなと呟きながら、私は文庫本から視線を廊下にいる愛斗くんに移す。
「莉奈、今日の帰り待ってろ。一緒に帰るぞ」
「え……やだっ……!」
そう私に出せる精一杯の声で叫んだのに。
「そういうことだから。じゃ」
愛斗くんとその友達は、次の授業の体育へと向かっていった。
王子がいなくなった今、クラス中の女子から向けられる視線は、さっきみたいなにこやかなものではなく、嫉妬を含んだものになっていた。