イジワル王子の甘い嘘
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結局、愛斗くんの誘いを断ることが出来なかった。


放課後、誰もいない教室で読書をしながら、私は愛斗くんを待っていた。


本当は1人でそそくさと帰りたいし、一緒に帰るにしても、教室のような人目に付く場所では待ちたくない。


だけど、高校に入って愛斗くんは、私を1人で帰してくれないことが結構ある。

俺を待ってろ、って言う。


私だって高校生。もう道になんて迷ったりしないのに、愛斗くんは何かと私を過保護に扱う。


この光景をみんなに見られてるから、私は嫌われているんだろうけど。




「……昨日買った本、もう読み終っちゃった」




“愛斗くんの幼なじみ”というレッテルを張られている私は、高校に入って特定の友達が作れないでいた。


休憩時間や放課後は、今みたいに本を読んで時間を潰すため、読む本のサイクルが早くなる。


あと何冊、読んでない本が家にあったっけ?


文庫本を閉じて、そんなことを考えながらカバンの中に収めていると




「おい、莉奈」




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