もう一度、あなたと…
大学卒業後、すぐに入籍だけ済ました。
会社に入っても暫くはお互い忙しいだろうというので、式はいずれまた…という事になった。

左手の薬指に誓いの指輪が光りだしたのは、入社から半年過ぎた頃。
私の誕生日プレゼントに…と、太一が買ってくれた。

『…これで名実ともに夫婦だな…』

部屋で二人、お揃いの指輪を眺めた。この頃はまだ新婚気分が抜けてなくて、いつも二人で居たように思う。
週何回か…なんて質問もされないくらいラブラブで、熱々だった気もする。

『…私、この指輪大事にする。ありがとう。太一…』

握り合った手が離れることなんてないと信じてた。
あの時の気持ちがずっとあったら、私達は離婚なんてものも、経験せずに済んだ…。



『写真…撮ろうか…』

指輪を贈られた次の日、ショッピングモールのフォトスタジオの前を通っている時に聞かれた。

式も披露宴もいつになるか分からない。だからせめてもの記念に…と誘われた。

『…いいよ。撮ろう!』

喜び勇んで中に入った。
季節は梅雨入り前。
ウエディングシーズンだった為、ドレスはあまり残ってなかった。


『すみません…レンタルしてる方が多くて…在庫があまりなくて…』

申し訳ながる写真屋のお姉さんに「ホントですね」とは言えず、取りあえず自分に一番似合う物を選んだ気がする。
でも、実際仕上がった写真を見たら、全然似合ってなくて。それがショックで堪らなくて…。


『焦って写真なんか撮るんじゃなかった…』

そう呟いたのがいけなかった。
カチン!ときた太一は怒って、全く口をきいてくれなくなった。
その気持ちを汲み取ってやれる程、自分も大人じゃなかった。
< 13 / 90 >

この作品をシェア

pagetop