もう一度、あなたと…
チャペルの前に案内された。
扉の向こうからピアノの音が聞こえる。
「結婚行進曲」
そのメロディーを響かせるのは、私と太一の夢だった。
『結婚式はしない』
そう決めた…と話すと、太一はムッとして黙った。
以前から頭にくると何も言わなくなる。そういう人だったから気にも留めなかった。
でも、後になって知った。
太一が式場を予約してたこと。
両親にも私にも言わず、解約したこと。
それが原因が夫婦間に亀裂が走った。
何もかも…お互いのコミュニケーション不足が招いた結果…。
扉が開いて、キラキラしたステンドグラスの光が反射する。
華やかな百合の香りに包まれて、一歩ずつ父とバージンロードを歩く。
この良き日に思い出すことが、太一との事だなんて…きっと神様も想像などしていない。
(だって、これ…夢だもんね…)
何もかも夢なら許される。
きっと、今だけの事なんだから。
赤い絨毯の上を進んで前を見る。
祭壇の上に白い十字架。その下に正装を身に付けた神父様。そして、その左脇に「たからがひかる」。
真っ直ぐな眼差しで私たちを見ている彼の姿は様になり過ぎて、直視するのも憚られた。
父が側を離れる。
託すかの様に彼の肩を叩いて、「たからがひかる」が隣に立った。
緊張した面持ちで彼を見つめる。
本来なら、自分から腕に手を通さなければならない筈なのに、私にはそれができなかった。
例え夢でも、この結婚を受け入れるべきではない気がしたから。
戸惑う私に彼が微笑む。そっ…と手を握りしめ、腕を通した。
無理強いという感じではない。
むしろ、安心しろ…と言いたげな感じ。
その腕を信じて前に進む。
神父様が微笑んで、私達に祝福の言葉をかけたーーー。
「……楽しい時も苦しい時も共に手を取り合い、慈しみ、愛し合うことを誓いますか…?」
青い眼の老神父の言葉に「たからがひかる」が滑舌の良い声で答える。
「誓います」
その声に胸が震える。
愛を誓って欲しかったのは、この人じゃない。
なのに…何故、こんなにも嬉しいと思ってしまうのか…。
「新婦、江梨花…貴女は新郎、宝田光琉を信じ、楽しい時も苦しい時も共に手を取り合い、慈しみ、愛し合うことを誓いますか…?」
神父様がじっと目を見て尋ねる。
(断らなきゃいけない。これは絶対間違ってる…!)
そう思うのに……
「…誓います…」
答えてしまった。YES…と…
「それでは指輪の交換を…」
運ばれるペアリング。
大事そうに赤いクッションの台座に包まれている。
その一つを「たからがひかる」が取り上げる。
そして、私の左手を取った。
扉の向こうからピアノの音が聞こえる。
「結婚行進曲」
そのメロディーを響かせるのは、私と太一の夢だった。
『結婚式はしない』
そう決めた…と話すと、太一はムッとして黙った。
以前から頭にくると何も言わなくなる。そういう人だったから気にも留めなかった。
でも、後になって知った。
太一が式場を予約してたこと。
両親にも私にも言わず、解約したこと。
それが原因が夫婦間に亀裂が走った。
何もかも…お互いのコミュニケーション不足が招いた結果…。
扉が開いて、キラキラしたステンドグラスの光が反射する。
華やかな百合の香りに包まれて、一歩ずつ父とバージンロードを歩く。
この良き日に思い出すことが、太一との事だなんて…きっと神様も想像などしていない。
(だって、これ…夢だもんね…)
何もかも夢なら許される。
きっと、今だけの事なんだから。
赤い絨毯の上を進んで前を見る。
祭壇の上に白い十字架。その下に正装を身に付けた神父様。そして、その左脇に「たからがひかる」。
真っ直ぐな眼差しで私たちを見ている彼の姿は様になり過ぎて、直視するのも憚られた。
父が側を離れる。
託すかの様に彼の肩を叩いて、「たからがひかる」が隣に立った。
緊張した面持ちで彼を見つめる。
本来なら、自分から腕に手を通さなければならない筈なのに、私にはそれができなかった。
例え夢でも、この結婚を受け入れるべきではない気がしたから。
戸惑う私に彼が微笑む。そっ…と手を握りしめ、腕を通した。
無理強いという感じではない。
むしろ、安心しろ…と言いたげな感じ。
その腕を信じて前に進む。
神父様が微笑んで、私達に祝福の言葉をかけたーーー。
「……楽しい時も苦しい時も共に手を取り合い、慈しみ、愛し合うことを誓いますか…?」
青い眼の老神父の言葉に「たからがひかる」が滑舌の良い声で答える。
「誓います」
その声に胸が震える。
愛を誓って欲しかったのは、この人じゃない。
なのに…何故、こんなにも嬉しいと思ってしまうのか…。
「新婦、江梨花…貴女は新郎、宝田光琉を信じ、楽しい時も苦しい時も共に手を取り合い、慈しみ、愛し合うことを誓いますか…?」
神父様がじっと目を見て尋ねる。
(断らなきゃいけない。これは絶対間違ってる…!)
そう思うのに……
「…誓います…」
答えてしまった。YES…と…
「それでは指輪の交換を…」
運ばれるペアリング。
大事そうに赤いクッションの台座に包まれている。
その一つを「たからがひかる」が取り上げる。
そして、私の左手を取った。