もう一度、あなたと…
グスグス鼻をグズつかせる私に根負けして、彼が腕を緩めた。
ポンポンと背中を叩いて、スルリとベッドから抜け出る。
「…急に受け入れろ…と言っても、お互い無理だよな…」
頭冷やしてくるとバスルームに向かう。
申し訳ない気持ちとホッとした気持ちとが入り混じる。
その気持ちを抱えたまま、自分もベッドから起き上がった。
下着を付けながら、自分の身体を確認する。
意識年齢とは違う若いカラダ。
さほど大きな変化はないみたいだけど、胸の張りや腰のくびれ辺りが、やはり違ってる…。
「……あれ?こんなトコに傷なんてあったっけ…?」
左腿の付け根に赤っぽい傷跡。
つい最近、どこかで打ったか擦ったかのような感じ。
「なんだろ…すごく生々しい…」
全てが夢みたいな世界で、ただ一つ現実味帯びてる気がした。
でも、全く痛みを感じないから、やっぱり気のせいかとも思った。
私が服を着た頃、バスルームから「たからがひかる」が出てきた。
すっかり着替えの済んだ私を見て、諦めたように息を吐く。
「朝飯にでも行くか…」
着替えながら説明してくれる。
予定ではこのホテルに今夜も泊まって、明日には自宅に帰ることになってるらしい。
「でも、エリカが落ち着かないんなら、今夜はキャンセルしてもいいぞ。家ならベッドもダブルじゃないし、離れて寝る方が安心ならそうしよう?」
拒否られてショックもあったに違いないのに、そう言って譲ってくれた。
確かに同じベッドに寝るなんて、今の私には重すぎる。
第一、もし今度、彼がその気になったら、また拒むなんて事もしにくくなる…。
「…そうしてもらえるなら……何よりだけど…」
式からこっち、常に「たからがひかる」に都合をつけてもらってる。
そんな事ばかりさせる自分が情けなくなる。
夢でも現実でも、どちらかが我慢し続ける結婚なんて、いずれはうまくいかなくなると知ってるからだーーー。
「…じゃあ、朝飯済んだらキャンセルな。ウチ帰ってノンビリしようぜ!どうせ明後日から出社だし…」
「しゅ…出社……?」
ドキッと胸が鳴る。
仕事へ行くという事は、太一と会う可能性もあり得るってこと…?
「そう。かったるいよな」
着替えた彼が振り向く。
仕事へ行って、太一と会ったらどうしようか…と無言で悩んでいた。
「エリカ…まさかとは思うけど…仕事も覚えてないとか言わないよな?」
深刻な顔してるから確かめられた。
実際、同じ仕事してるのかすらも不安があった。
「…言わないけど…私が思ってるのと同じ仕事かどうかは心配で…」
「自分は何の仕事してると思ってるんだよ⁉︎ 」
「え…物流会社の人事事務…だけど… 」
戸惑いながら答える。
夢だと思ってる世界で、仕事内容すらも不確かだなんて…。
見つめる「たからがひかる」の顔が曇る。その意味が分からず、キュッと唇を結んだ。
「…ちっ!正解!…なんだよ!仕事の記憶だけはしっかりしてるじゃん!」
自分のことは抜けてんのに…とボヤく。
申し訳ないと思うけど、その点についてだけはホッとした。
ポンポンと背中を叩いて、スルリとベッドから抜け出る。
「…急に受け入れろ…と言っても、お互い無理だよな…」
頭冷やしてくるとバスルームに向かう。
申し訳ない気持ちとホッとした気持ちとが入り混じる。
その気持ちを抱えたまま、自分もベッドから起き上がった。
下着を付けながら、自分の身体を確認する。
意識年齢とは違う若いカラダ。
さほど大きな変化はないみたいだけど、胸の張りや腰のくびれ辺りが、やはり違ってる…。
「……あれ?こんなトコに傷なんてあったっけ…?」
左腿の付け根に赤っぽい傷跡。
つい最近、どこかで打ったか擦ったかのような感じ。
「なんだろ…すごく生々しい…」
全てが夢みたいな世界で、ただ一つ現実味帯びてる気がした。
でも、全く痛みを感じないから、やっぱり気のせいかとも思った。
私が服を着た頃、バスルームから「たからがひかる」が出てきた。
すっかり着替えの済んだ私を見て、諦めたように息を吐く。
「朝飯にでも行くか…」
着替えながら説明してくれる。
予定ではこのホテルに今夜も泊まって、明日には自宅に帰ることになってるらしい。
「でも、エリカが落ち着かないんなら、今夜はキャンセルしてもいいぞ。家ならベッドもダブルじゃないし、離れて寝る方が安心ならそうしよう?」
拒否られてショックもあったに違いないのに、そう言って譲ってくれた。
確かに同じベッドに寝るなんて、今の私には重すぎる。
第一、もし今度、彼がその気になったら、また拒むなんて事もしにくくなる…。
「…そうしてもらえるなら……何よりだけど…」
式からこっち、常に「たからがひかる」に都合をつけてもらってる。
そんな事ばかりさせる自分が情けなくなる。
夢でも現実でも、どちらかが我慢し続ける結婚なんて、いずれはうまくいかなくなると知ってるからだーーー。
「…じゃあ、朝飯済んだらキャンセルな。ウチ帰ってノンビリしようぜ!どうせ明後日から出社だし…」
「しゅ…出社……?」
ドキッと胸が鳴る。
仕事へ行くという事は、太一と会う可能性もあり得るってこと…?
「そう。かったるいよな」
着替えた彼が振り向く。
仕事へ行って、太一と会ったらどうしようか…と無言で悩んでいた。
「エリカ…まさかとは思うけど…仕事も覚えてないとか言わないよな?」
深刻な顔してるから確かめられた。
実際、同じ仕事してるのかすらも不安があった。
「…言わないけど…私が思ってるのと同じ仕事かどうかは心配で…」
「自分は何の仕事してると思ってるんだよ⁉︎ 」
「え…物流会社の人事事務…だけど… 」
戸惑いながら答える。
夢だと思ってる世界で、仕事内容すらも不確かだなんて…。
見つめる「たからがひかる」の顔が曇る。その意味が分からず、キュッと唇を結んだ。
「…ちっ!正解!…なんだよ!仕事の記憶だけはしっかりしてるじゃん!」
自分のことは抜けてんのに…とボヤく。
申し訳ないと思うけど、その点についてだけはホッとした。