もう一度、あなたと…
昼休み、「たからがひかる」は私を社外に連れ出した。

「…どうだ⁉︎ 仕事は⁉︎ 」

食事をしながら心配された。

「きちんと出来てるか?昨日は不安そうだったけど…」
「う、うん…大丈夫。いつも通りで変わりなかったから」

32才の私がしてた事と同じ内容。
違わないのは仕事だけで、その周りがあれこれ違ってる。
課長だった「杉野太一」は部長になってるし、単なる同僚だった筈の「たからがひかる」は自分の夫になってる。
変化に頭がついていかない。
特に…太一の変わりようは酷すぎる…。

「ねぇ、あの…」
「んっ⁉︎…」

おかずのエビフライを咥えたまま、彼がこっちを向いた。

「あの…杉野部長のことなんだけど…」
「…ああ、あのセクハラ部長のことか」

呆れるような顔をして、「たからがひかる」が暴言を吐いた。

「イヤラシイ奴だよな。新妻なんて言い方してさ。一体どんな目で見てるんだよ」

怒ったようにご飯をかき込む。
舞のみならず、彼も太一を嫌ってるみたいだ。

「以前からあんな人…だったの…⁉︎ 」

確かめるように聞く私を驚いた表情で見直した。箸を置く彼が、疑う様に聞き返す。

「お前…まさか覚えてないのか?」
「…何を⁉︎」

キョトンとする。覚えてる覚えてないとかいう段階じゃない。私にとって太一は、一緒に暮らしたこともある元夫だ。

「あいつ、ずっとエリカにモーション掛けてたんだぞ!」
「えっ⁉︎ …た…ぶ、部長が⁉︎ 」

思わず「太一」と呼びそうになって、慌てて言い直した。
不自然さに気づかれてないかと、ハラハラした。

「ど…どうして⁉︎ 」

確かに32才の私にとって太一は、結婚までした仲だ。
でも、26才の私にとっては、単なる会社の上司。
一年前から「たからがひかる」と私は付き合ってた仲で、それは会社でも公認だと聞いていた。

呆れる様に彼がため息を吐く。
気を取り直して、少しづつ教えてくれた。
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