俺様社長と秘密の契約
・・・本気で襲わせるつもりはなかった。
襲わせたところで、オレが助けに入る予定になっていた。

…しかし、それは出来なかった。
理子を助けたのは、オレではない、別の人間。

予定時刻の勘違いで、違う男が、理子を助けた。

でも、不幸中の幸いか、助けた男は、理子の前からすぐに立ち去り、オレはすぐさま理子の下に。

混濁する意識の中、自分を助けてくれたのは、オレだと、理子が勘違いした事もよかった。

理子は、片時も、オレの傍を離れる事が出来なくなっていた。

理子が『オレのモノ』になった瞬間だった。

何もかもが順調に進んでいるように思えた。

・・・でも、違った。

大学に通いながらも、父親の会社で、一生懸命に働いていたと言うのに、父はオレを見放した。

兄貴がフォローに入ったが、父は頑として自分の意志を貫き通した。

父にとって、兄貴がすべてだった。


…無気力になったオレは、すべてを捨てた。

会社も、親兄弟も、・・・そして、自分のモノにしたはずの理子さえ。


…数年後、こんな形で理子に再会するとも知らず。
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