俺様社長と秘密の契約
…ガチャン。

カップの音にハッとして、顔をあげた理子。

目線の先には、創の秘書が、不思議そうな顔で理子を見下ろしている。

「…どうかされましたか?」
「…いいえ。あの、これを中に持っていってもらえないでしょうか?」

震えた声で、秘書にお願いしたい理子を見て、秘書は仕方ないといった顔で頷いた。

理子は逃げるようにその場を離れた。

秘書は、受け取ったコーヒーを社長室に持って入る。

「…失礼します。コーヒーをお持ちしました」
「…私は理子さんに頼んだのですが?」

少し怒ったような表情で、創が言う。秘書は、困ったような顔をしながら、謝罪した。

「…申し訳ございません」
「…まぁ、いいですよ」

…二人の会話を聞いていた龍吾は、少しばかり顔色を変えた。それをチラ見した創はニヤッと、不適な笑みを浮かべた。

「…理子はこちらに?」
「…えぇ。私の秘書をしてもらっています」

そう言うと、創はニコッと微笑んだ。

「…そうですか」

そう言った龍吾もまた、笑顔で返した。

…創はそれが面白くなかった。

顔色を変えたのは一瞬で、直ぐにいつもの龍吾に戻ったのが、気に入らない。

「…理子さんを呼びましょうか?」
「…いいえ。先程も言ったように、私達は離婚したので、会う必要はないです。それよりも仕事の話をしましょう」


龍吾の言葉に、創は気づかれないように、下唇を少し噛んでいた。
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