俺様社長と秘密の契約
それから、創立記念パーティー迄に、龍吾が何度か創の会社に訪れた。

理子は、ただの一度も、龍吾に会うことはなかった。いや、会わす顔などなかった。

何も言わず、ただ離婚届を置いていったのだ。愛想尽かれても、おかしくない。

レストランで言われた言葉は、あの時だけの言葉…

悶々と、そんなことばかり考えてしまう。

龍吾に嫌われることが、こんなにも苦しいなんて。

それでも尚、理子は龍吾を愛している。

お祖父様に貰った会社を守るため…

龍吾を守るため…

自分にはこんなことしか出来ない不甲斐なさに、理子はまた、涙が止まらなくなった。

…それから幾日過ぎたのか。創立記念パーティーの日を迎えた。

創に連れられ、某ホテルの会場に理子は来た。

沢山の人でごった返していた。

まもなくして始まったパーティー。

理子は、会場の片隅でそれをぼんやりと見ていた。

自分がここにいる意味などなにもない。ただ、静かに、パーティーを傍観しているにすぎない。

「…理子さん」

会場中に、創の声が響く。挨拶をしていた創が、マイクで理子を呼んだのだ。

理子は驚いて、壇上の創を見た。

「…彼女は、私の大事な人です。今後、この会社を、彼女と二人で守っていこうと思っています」

…理子は、創の言葉を他人事のようにしか、聞こえていなかった。だが、とんでもないことを言っているのはわかった。

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