俺様社長と秘密の契約
その言葉に、また、会場内がざわつく。

創は、声がした方を睨み見た。

「…何しに来た?今夜は、招待などしていないはずだ」

創の言葉ににこりとしたのは。


「…龍吾さん」

「…全く、困った奥さんだな。迎えに行くから、待っててくれと、言った筈だが?」

そう言って、困ったような笑みを浮かべた龍吾。

「…誰が奥さんだって?理子さんとは、別れた筈だ」

創は、理子を自分の後ろに隠してしまう。

大企業の社長である二人のやり取りを、周囲は好奇の眼差しで見つめている。

「…パーティーの邪魔をするつもりはない。俺は、理子を返してもらえればそれでいい」

龍吾の言葉に、創はハッとした。

明らかに、今は自分が不利になる状況だ。マスコミ関係者も呼んでいる。今はとにかく場を納め、自分達はこの場を離れるべきだと。

創は、当たり障りのない挨拶を述べると、理子の手を引き、会場から少し離れた控え室に向かう。

勿論、龍吾も二人を追って、控え室に入った。

「…会場を離れたのは、懸命な考えだな」

「…うるさい。アンタ、私に言いましたよね?理子とは別れたから、なんの関係もないと」

「…言いましたよ。でもあれは、一時しのぎに言ったに過ぎない。現に、俺と理子は、まだ、れっきとした夫婦だからな」

そう言って、龍吾はポケットの中から、二人が夫婦である事を証明する書類を見せた。

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