俺様社長と秘密の契約
龍吾は立ち上がると、玄関にいくなり、驚きの眼差しで龍吾を見た理子をぎゅっと抱き締めた。

「ど、どうしたんですか?」

理子の言葉に、龍吾が逆に聞き返す。

「どうしたんですか?じゃないだろ?こんな手紙をデスクに残して」

差し出された封筒を受け取った理子は、そのなかを開けてみた。そして、それに目を通すとポツリと呟いた。

「…これ、私じゃありません」
「…は?」

理子の言葉に、龍吾は驚きを隠せない。

「…これ、私の字じゃありません」
「…じゃあ、いったい誰が?」

さすがの理子も、分からないので、首を振って見せる。

「…手紙は理子じゃないにしても、それじゃあ、今まで、どこに行ってた?」

秘書室にいる筈の理子が居なかった。携帯にも出なかった。

理子は、なんだか複雑そうな表情で、龍吾を見上げた。そして、すぐに視線を落とすと、鞄をガサガサと漁ると、白黒の写真を龍吾に手渡した。

写真を見ても、何がなんだか分からない様子の龍吾。

「…夕方、体調を崩してしまって、そこに丁度、真中さん(運転手)が帰って来て、私を病院に連れていってくださったんです。色々あって疲れが出たんだろうと思ってたんですけど」

「…理子?」

「…この子のお父さんになってもらえますか?」

「…これは」

「…豆粒みたいですけど、その写真は、私達の赤ちゃんです」

数秒動かなくなった龍吾を見て、理子は、不安にかられる。…嬉しくなかったのかと。


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