俺様社長と秘密の契約
「高瀬様、お茶の一つも出さず、失礼しました」

そう言って伊織に一礼した。伊織は微笑み、首を振る。


「そんな事は、お気遣いなく。私どもも、突然押しかけましたし。

それに、麗美は我が儘に育ったせいか、言いたい事だけ言って、
サッサと帰ってしまいましたし、こちらの方が失礼した位です」


そう言って伊織はきまり悪そうに笑った。

…この人はきっと、妹思いの優しい人なんだろうな。
そうでなければ、こんな所まで一緒についてなど来ないはずだから。


「…それでは私はこれで」

そう言った私は伊織に一礼して、社長室に帰ろうとした。


「…私は今、高瀬物産の専務をしています。
また、お仕事で会うと思いますのでその時は宜しくお願いします」


「はい、こちらこそ宜しくお願い致します」


「・・・あの」


「…まだ何か?」

行こうとする私を、止めてまで、まだ何か言いたい事があるのだろうか?
…今日が初対面だと言うのに。


「…差し出がましい事を言うかもしれませんが。
…貴女も、御堂社長の事が、お好きなようですね」


「・・・ぇ」

…青天の霹靂とはこのことかもしれない。
私は今まで、御堂社長の事はどちらかと言えば嫌いなタイプだった。

自分勝手で、俺様で、何を考えているのかわからない人だから。
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