俺様社長と秘密の契約
それでも何とか取り繕うと、別のウソを上塗りする。

「・・・目が赤いですか?…きっと、さっき、目にゴミが入ったから」

「・・・」

そう言って笑って見せたのに、御堂社長は眉間にしわを寄せ、
立ち上がるなり、私の傍に来ると、あごを持ち、視線を絡ませた。

・・・そんな事をされると、ウソがばれてしまいそうで。
それでも懸命に、平静を装う。

「…あの男に、何か言われたか?」

「な、何を訳の分からない事を・・・
高瀬様をお送りしましたが、仕事の話をしただけで、何も」


「…お前は嘘が下手だな」

「社ちょ・・・」

反論する前に口を塞がれた。・・・私は必死に抵抗した。

…これ以上、傷が深くなる前に、こんな関係に終わりを告げたかった。


「…ッ」

「?!・・・す、すみません」

抵抗したせいで、私の爪が、御堂社長の頬を、軽く傷つけてしまった。
咄嗟に謝った私だったが、それ以上、何も言う事は出来なかった。

・・・御堂社長のこんな顔を見たのは初めてだったからだ。
私を見下ろすその顔があまりに切なげで、それでも、私の頬に、
自分の手をそっと添えた。


「…理子」

「・・・・」

御堂社長は私の名を呼んだだけで、それ以上は何も口にしなかった。
その代わり、私をきつく抱きしめた。


「…私を、誰かの代わりにしてるんですか?」

「・・・何?」
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