俺様社長と秘密の契約
・・・御堂社長の言葉は、あながち間違っていないようだった。
挨拶に来る各会社の代表たちがこぞって私を褒めてくれたからだ。

社交辞令だと思っていたが、周りの目は確かに本心を言ってる目だった。


「・・・しばらく、傍を離れるぞ」

「・・・え?」

突然の言葉に、一気に魔法が解けていく。


「高瀬社長には、色々と言っておかなければならない事があるから」

「・・・わかりました」

「…そんな顔をするな、大丈夫だ。・・・どうしようもなくなったら、
俺の傍に来い、高瀬社長の事は気にしなくていいから」

そう言って、私の頬をそっと撫でると、高瀬社長の下へと離れていった。

…そう言われても、こんな大勢の人の中で、ポツンと一人いるのは、
不安でたまらない。
私はそれを紛らわせようと、カクテルを飲み干した。


「…そんなに飲んでたら、酔っぱらってしまいますよ」

「…貴方は」

「覚えててくれましたか?」

そう言って微笑んだのは、麗美と一緒に会社に来ていた麗美の兄、
伊織だった。


「…ふぅ」

「どうしたんですか、そんな溜息をついて」

「…知らない人ばかりで、息苦しかったんです。こんな席は初めてですし。
やっと息が出来ました」

そう言って微笑むと、伊織も同じように微笑んだ。
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