俺様社長と秘密の契約
「…ヤバ…遅刻」

ふと目に留まった時計が、遅刻ギリギリを指していた。

私は最寄駅から電車に乗り、会社まで急いだ。

…途中。何度も気持ち悪くなったけど、なんとか我慢した。


会社に一歩足を踏み入れた私は、一気にシャキッとなる。

二日酔いは響くけど、社長秘書として、だらしないところは見せられない。

背筋をピンとして、ロビーを歩き、エレベーターに乗る。

・・最上階に着くころには、もう誰も乗っていない。

その時が唯一息抜きできる瞬間だった。


「…仕事、仕事」

呪文のように唱え、秘書室に入った。

・・・私のデスクがない。

私はその場に立ち尽くした。…社長秘書は一人だけだ。

部署異動なんて張り紙はなかったし、社長にクビだと言われてもいない。

…一体、私のデスクはどこに行ってしまったの?


そう思った時だった。

秘書室の奥にある社長室のドアがゆっくり開いた。

「…おはようございます、社長。

…一体こんな朝早くから、何をなさっているのですか?」


私の目の前に現れた社長。

御堂コーポレーション社長、御堂龍吾(31)社長は、

背広を脱ぎ、ワイシャツ袖をまくり上げ、額に汗が滲んでいた。
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