俺様社長と秘密の契約
反則だ、その顔は。
俺は思わず理子を抱き寄せていた。

…理子は、驚きのあまり、硬直している。無理もない。周りには、他の客もいる。唯一救いなのは、ここが薄暗い場所だと言うことくらいか。

俺は全く周りが気にならないくらい、理子のことしか頭にない。

「…理子」

「…は、離してください。恥ずかしいです」

「周りのことなんて気にするな。今は、俺の事だけ考えろ」

「…そんなの無理です」

…しばらく抱きしめていたが、流石に限界が来たのか、理子がモゾモゾし始めた。…仕方ない。離してやるか。

ようやく俺の腕の中から解放された理子は、溜息をついた。

「…俺が、理子を好きだと言ったら、お前はどう思う?」

「なっ」
俺の言葉に、当然驚いている理子。
でも直ぐに、普段の顔に戻る。

「…それは絶対ない話ですよね。龍吾さんには、想いを寄せてる人がいるんですよね。…もしそれが想いを寄せてる人が私だとしても、永遠に結ばれないと思います。私と龍吾さんでは、住む世界が違い過ぎるから」

…言い終えた理子の顔は、なんだかなきそうだった。

「…そうだな、俺とお前は、違い過ぎるから」

…どんなに想っても、結ばれないのか、俺たちは。そう思うと、酷く胸が痛んだ。
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