俺様社長と秘密の契約
「…落し物を」

「・・・は?」

「そう、落し物を届けに来てくれただけなんです。
この間のパーテイーで、ハンカチを落としたらしくて、たまたま近くの会社に来てて、それであの、連絡先も分からないから直接持って来てくれたそうです」

ただの、思いつきのウソ。それでも、私はたまたまデスクの上に置かれていた自分のハンカチを指差してそう言った。
・・・納得できてはいないのだろう、社長の顔は明らかに不信がっている。

「…そんな事で、ここまで来たのか?」

「…優しい方なんでしょうね、分かってるのに捨てるなんでできなかったからって」

…もう冷や汗ものだ。ウソがばれやしないかと思って。

「…ですから、社長が気にするようなことはなにも・・・
でもあの…何でそんなに怒ってるんですか?」

・・・その事が気になっていた。こんなに怒った顔で詰め寄られるなんて思わなくて。
これじゃあまるで、嫉妬みたいな。


「…お前は誰のものだった?」

「・・・・」

「俺の許可なく、他の男と喋るな」

「…何でそこまで」


「…お前が知る必要はない」

「…もう、止めませんか」

「・・・何?」


「…もう、こんな関係終わりにしてください。
最近は、触れる事も、話しをする事すらないじゃないですか?」

触れられない事が苦しいなんて、言えるはずもない。
言えないなら、…触れてくれないなら、もう、この関係は終わりにしたい。
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