俺様社長と秘密の契約
…戻らなきゃ。…今は仕事中だよね。
私は大きな溜息をつき、秘書室に戻った。
…仕事が終わったのは、午後7時。御堂社長に帰ることを告げ、帰り支度する。

「…理子」
「…なんでしょうか?」

「この後の予定は?」
「…知人に会う約束がありますが」

「…そうか、わかった」

何か言いたげな顔の社長。聞こうと思ったが、やめた。

会社を出た私は、伊織に連絡をした。
間も無くして、伊織が私を迎えに来た。

「ありがとう、時間を作ってもらって」
「…いえ、あの、相談とは、なんですか?」

「…まぁ、そんなに焦らないで下さい。食事でもしましょう」

そう言って、話をはぐらかした伊織。
確かに焦る必要はないかと、軽く考えていた。

…食事中は、談笑し、相談らしき話はなかった。時間だけが過ぎて行く。

「…あの、そろそろ、相談を」
「…そうですね、これ以上引き伸ばしても、ダメですよね」

「…」

「…私は、純粋な気持ちで、貴女に惹かれてます」
「…え⁈」

「でも貴女は、御堂社長に好意がある。諦めようと思ったが、やめました」

「…どういうことですか?」
「麗美との婚約を解消したことに、うちの社長がご立腹でして、解消するなら、今後の取り引きは中断すると言い出したんです」

「…そんな」

高瀬物産とは、相当な取り引きがある。中断されれば、相当な損害。
…婚約解消は、出来ない。

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