俺様社長と秘密の契約
話し終えた善一郎の手を取った理子。
善一郎は驚きの眼差しで理子を見つめた。

俺はそんな二人を、ただ黙って見守った。

「…母を、」
「・・・ん?」

「お爺様は、母を、心から愛していらしたんですね」
そう言って微笑んだ理子。

「…私を爺さんだと呼んでくれるのか?
…真理を散々苦しめたのに。こんな私を・・・」

そう言って善一郎は言葉を詰まらせる。

「母の話をするお爺様は、本当に優しい表情をされるから。
悪い人なんかじゃないって思えます。母を愛するが故にボタンをかけ間違えてしまった。

…もし、許されるなら、またここに、お爺様に会いに来てもいいですか?」


「もちろんだ・・・あと幾日生きられるかわからん。
だが、生きている限り、理子の力になろう」

そう言って善一郎は理子の手を握りしめた。

「…そんな、私は何も望みません、何もいりません。
ただ、お爺様の孫として、傍にいられたらそれだけで嬉しいです。
だって、私は、天涯孤独の身だと思っていたから・・・
両親もなく、両親が生きていた頃も、親戚はないと聞いてました。
だから嬉しいんです、私と同じ血を引いた人がいる事が」

理子は涙ながらに呟いた。
…善一郎はそんな理子を、優しく抱きしめた。

最初は不安もあったが、ここに連れて来た事を本当に良かったと思えた瞬間だった。


「・・・なぁ、龍吾」
「・・・なんですか?」

「前にも言ってあった事だが・・・神宮寺グループを引き継ぐつもりはないか?」
善一郎の言葉に、理子は顔を歪めた。
…そうだ、この問題はまだ解決していない。
…今日は、理子の誤解を解くためにここに来たんだ。
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